Designer's Voice
anni plusデザイナー、Iさんにインタビュー
2018年の8月にグラン山貴にやってきたIさん。
その職業人生は、一貫してファッション一筋、デザイナー一筋。
社会人としての第一歩を踏み出した時期が就職氷河期だったから「自分の興味」を大切にした、と語るIさんからは、何のてらいも気負いも感じません。
あくまで等身大のワーキングマザーであり、根っからのファッション好き。
そんなIさんが生み出すanni plus、そしてご自身のことを聞いてみました。
せっかくがんばるんだったら、興味があることでがんばりたい
── Iさんの経歴を伺うと、新卒から一貫してファッションの世界でデザイナーをされてきたんですね。デザイナーになるのが夢だったんでしょうか?
大学は普通に経済学部だったんですけどね。
私の時は就職が厳しい時代で、就職活動が大変だったんです。大量に受けて一つでも内定が出たらラッキー、みたいな。
まわりを見渡してみて、「そんなにがんばるんだったら、自分の興味があることでがんばろう」って思ったんですよね。
さすがにそのままファッションの世界には行けないだろうからと、ニットの専門学校に行ったんですよ。
── 「がんばるなら、興味のあることで」というシンプルだけれど、まっすぐな思いからだったんですね。そもそもファッションに興味があったんですか?
お洋服が好きでしたね。
ウインドーショッピングは、飽きずに何時間でもできちゃうんです。
── だからこそ選んだファッションの道でしたが、そこでもさらにニッチな道を選択したのがIさん流ですね。
今と違って、あの頃は一つのブランドの中にデザイナーさんがたくさんいるブランドが多かったんです。
その中でも、ニットのデザイナーって少なかったんですよね。それもあって、手に職、と思ってニットの専門学校に行きました。
大学も出てたからこれ以上時間もお金も無駄にはできない、という思いがありましたね。
── ニットという分野を極めることで専門性の高い知識を技術を獲得し、ファッションの世界で「手に職」をつけることからスタートさせた。とても戦略的ですが、Iさんからはそんな気負いはむしろまったく感じられず、あくまで自然体なのが素敵です。
子どもの成長にあわせながらも、デザイナーとしてのさらなるアップデートを目指して
── 前職では16年にわたっていくつかのブランドのデザイナーとして活躍されたそうですが、グラン山貴への転職を決めたのはどうしてですか?
子どもが三年生なんですけど、前職では時短が三年生いっぱいまでだったんです。時間にもうちょっと融通がきくところがあるといいなと思っていた。
さらに、そうやって育児に時間が必要なのもあと少しですから、デザイナーとしても同時に成長できるような環境を求めていました。
時短は条件的には厳しいと思っていたけれど、こちらでご縁をいただくことができました。
── 働きやすさとともに、デザイナーとしての成長も見込めるような環境を見つけられたんですね。
会社の雰囲気がとてもいいと感じています。良い意味でゆるい、アットホームな会社。
現在は時短で16時半で上がらせていただいているけれど、それがやりにくいとかもまったくないんですよね。
一つにブランドに関わる人数が少ないので、コミュニケーションが取りやすいです。
これまで私は主にニット専門でやってきました。
関わる人数が多いので、アイテム専門でという形でやってきたんですけど、ここではデザイナーは私だけ。
なので全部のアイテムができる。今の時代は、すべてのアイテムができることが強みになると思っています。
デザイナーは等身大のワーキングマザー、anni plusの生まれる場所
── anni plusは、まさにIさんと同世代の女性をイメージしたブランドですね。
そうですね。とはいえ自分自身がそのまま着るか、と問われるとそうとも限らないんです笑
私自身はわりとカジュアルなものを選んでいますね。
ただ、自分が着るかというと違うけれど、これまでやってきたもののテイストと近しいものはあると感じています。
だから、共感しやすいですね。
── デザイナーとして、アイデアはどんな時に浮かぶんですか?
電車の中かな?
電車では、女性専用車両になるべく乗るようにしているんですよ。その方がいろんな人が見られるから。
勉強しようとしてみているというよりは、興味があるんですよね。
── どんな女性に目が止まりますか?
やっぱり自分のブランドのイメージに近しい人は、どうしても目に入りますね笑
例えは膝丈スカートを履いていたら、何を合わせているかなってつい見ちゃいます。
全体的な雰囲気を見て、甘めが好きなのかなって想像したり...。
── 根っから好き、という感じですね。インプットはどのようにされていますか?
雑誌も店頭も見るし、ネットも活用しますね。
Pinterestで、カテゴリに分けられたものの中からひたすらブラウスばっかり見てみたり。
いろんなインプットをしていますね。
自分の買い物に行くとあれもこれも欲しいって楽しいけど、いざ「良いものを、売れるものを作ろう!」って思っちゃうと全然面白く無くなっちゃう。
なので、あまり考えないで見る方が自由で楽しくて、結果として良いアイデアが出ますね。
絶対結婚式の服を買おう!ってなってると、買えなかったりするじゃないですか。
だから、常にフラットにいつもの状態でいることを心がけていますね。
── anni plusを着る女性のイメージは?
コンサバティブで、エレガント。でも、かちっとしすぎず時代性を少し取り入れていて、可愛らしい。
働いているママ世代をイメージしていて、学校に着て行ったり、お仕事に着て行ったり...。
自分も同じ世代ということもあって、授業参観に行ってまわりに実際にいるママたちがまさにですね。
トレンドを追いまくるのがanni plusではないけれど、その要素は少し取り入れる。
そうすることで、大人のしっかりした女性のための服に、可愛さや遊び心のエッセンスを効かせることをイメージしています。
── デザインする時に心がけていることはありますか?
「一点で手に取ってもらうこと」ですね。
anni plusというショップがあるわけではないので。
たくさんのお洋服が並べられている中で、確実に手に取ってもらえる。そんな引きの強さもイメージしていますね。
これから目指していきたいこと
── デザイナーをしていて、嬉しい!とか楽しい!と感じるときってどんなときですか?
街で自分がデザインした服を着ている人を見かけると、嬉しいですね。
これすごくいい!っていうのを思いついたときは調子にのるし笑
それをパタンナーさんと一緒にかたちにして、サンプルに上がってきたときに思い描いたとおりだったときは嬉しいですね。
サンプルが上がってきた時にイメージと違うっていうのは、ようは自分が思い描けていないだけ。
そういうときは悲しいですね。でも、妥協はしないです。
パタンナーさんやMDさんと真剣に話し合って、直します。
── デザイナーとして目指すところは?
夏にここに来たばかりなので、まずは今のブランドを軌道に乗せたいですね。近い目標としてはそこ。
探りながらそれをやっているところです。
やっぱり、結果を出せるデザイナーになりたいですね。
経費だけ使ってないで笑
── 一人でブランドのデザインをやるということは、自分の肩にかかってくる範囲が大きいですよね。得意も苦手も全部やるわけで...。
そうですね、だからたとえばシーズンごとの撮影もそうなんですけど、初めてやることがたくさんあって勉強して力をつけつつですね。
それは自分へのプレッシャーでもあるし、楽しくもあるところです。
これまではニットとカットソーがメインだったので、ジャケット一つとっても勉強なんです。
今までやってきたことを生かしつつも、新しいことをどんどん吸収しているところです。
だから、場数を踏んでいきたいですね。
トータルでできるのが、このブランドの強みだと思います。